はじめに
キャッシュ・フロー計算書の直接法と間接法は、下記の図のように営業キャッシュ・フローの小計までが異なり、小計以降は同じ様式・計算方法になります。
本記事では、直接法の小計までをみていきます。
資料
営業収入
債権残高の流れは、
となります。
この債権回収がキャッシュ・フローの営業収入になります。
それでは実際に見ていきます。
前期末金額、当期末金額
貸借対照表で債権をみると、売掛金があり、前期末2,500で当期末は2,995となっています。
当期売上に対する債権
損益計算書を見ると、売上は10,000です。
売上は全て債権で発生すると考えます。
これを仕訳でみると
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
売掛金等 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
となり売上から、当期発生債権(売掛金)の増加がわかります。
貸倒引当金
貸倒引当金の仕訳の流れは下記になります
貸倒引当金 XXX / 売掛金等 XXX
期末
貸倒引当金繰入 XXX / 貸倒引当金 XXX
期末
P/Lから下記の仕訳が行われたことがわかります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金繰入 | 50 | 貸倒引当金 | 50 |
期末で貸倒引当金が50増えたにも関わらず、B/S貸倒引当金では、
-75-(-30)=-45
で45しか増えていません。
差額の5は貸倒が起こったと考えられます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 5 | 売掛金 | 5 |
これで、当期発生貸倒引当金がわかりました。
それでは、式に5をあてはめます。
債権回収算定
債権回収以外は数字が当てはまりました。
債権回収をXとして求めます。
2,500+10,000-5-X=2,995
-X=2,995+5-2,500-10,000
→X=9,500
結果営業収入は、9,500となりました。
原材料又は商品の仕入支出
債務残高の流れは
となります。
この債務支払がキャッシュ・フロー計算書の原材料又は商品の仕入支出になります。
それでは実際に見ていきます。
前期末残高、当期末残高
貸借対照表で債務をみると、買掛金があり、前期末1,600で当期末は1,400となっています。
当期仕入に対する債務
損益計算書を見ると、当期仕入は6,200です。
仕入は全て債務で発生すると考えます。
これを仕訳でみると
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 6,200 | 買掛金等 | 6,200 |
となり仕入高から、当期発生債務(買掛金)の増加がわかります。
債務支払算定
債務支払以外は数字が当てはまりました。
債務支払をXとして求めます。
1,600+6,200-X=1,400
→X=6,400
結果債務支払は、6,400となりました。
債務支払は、現金による支払です。
ということは、現金を減らす効果であるので、キャッシュ・フロー計算書での表示は、
原材料又は商品の仕入支出 △6,400
となります。
人件費の支出
人件費支出は、
・給与、賞与
・退職金
の2つの合計額となります。
それでは最初に給与賞与を見ていきます。
給与賞与
まず、未払が発生する給与賞与の流れを仕訳から見ていきます。
給与は20日締め、25日支払とします。
前年度3月21日~3月31日の未払計上分を戻します。
未払給与 XXX / 給与 XXX
給与現金支給額
給与 XXX / 現金預金 XXX
当期末計上
給与は20日締めなので、3月21日~3月31日の未払分を計上します。
給与 XXX / 未払給与 XXX
上記仕訳から給与の流れをあらわすと、
となります。
前期末残高、当期末残高
今回の例では、当月末日締め当月末日払いなので未払いは発生しません。
その場合前期末、当期末残高は0となります。
PL給与
損益計算書を見ると、給与・賞与手当は1,000です。
給与現金支給算定
債権回収以外は数字が当てはまりました。
債権回収をXとして求めます。
0+X+0=1,000
→X=1,000
となります。
結果給与・賞与は、1,000となりました。
退職金
退職給付引当金の流れは、
となります。
退職金支払は
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
退職給付引当金 | XXX | 現金預金 | XXX |
となり、退職金支払時に現金預金が動くことになります。
このことから退職金支払がキャッシュ・フロー計算書の人件費支出になります。
それでは実際に見ていきます。
期首残高、期末残高
貸借対照表で退職給付引当金をみると、前期末700で当期末は800となっています。
退職給付費用
損益計算書を見ると、退職給付費用は150です。
仕訳では、
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
退職給付費用 | XXX | 退職給付引当金 | XXX |
となり、退職給付引当金を増加させることがわかります。
退職金支払
債務支払以外は数字が当てはまりました。
債務支払をXとして求めます。
700+150-X=800
→X=50
となり、退職金支払いは50となりました。
人件費支出 合計
給与賞与と退職金支払額が出たので、合計します。
給与賞与1,000+退職金50=1,050
人件費支出は、現金を減らす効果であるので、キャッシュ・フロー計算書での表示は、
人件費支出 △1,050
となります。
その他の営業支出
その他の営業支出は、P/Lのその他の営業費になります。
今回の例では、支払時にすべて現金で支払っているものとします。
なので、P/Lその他の営業費=C/Fその他の営業支出となります。