売価還元法
売価還元法とは
異なる品目の資産を値入率の類似性に従ってグループに区分し、一グループに属する期末商品の売価合計額に原価率を適用して、期末棚卸品の金額を算定する方法です。
取扱品種が多い小売業にて棚卸資産の評価に適用されます。
売価還元法は、売価還元原価法、売価還元平均法とも呼ばれます。
売価還元法の原価率の計算式
売価還元法の原価率の計算式には、
①連続意見書第四が規定する計算式
②法人税法が規定する計算式
の2つがあります。
日商簿記1級の売価還元法は、①連続意見書第四が規定する計算式が出題されます。
それではまず、①連続意見書第四が規定する計算式を見ていき、次ページで②法人税法が規定する計算式をわかりやすく解説していきたいと思います。
①連続意見書第四が規定する売価還元法
売価還元原価法を用いた原価率の計算
下記の算式を用い、期末棚卸額が総平均原価に相当する評価額が求められます。
原価率= 当期繰越商品原価+当期受入原価総額
期首繰越商品小売価額+当期受入原価総額+原始値入額+値上額―値上取消額―値下額+値下取消額
売価還元原価法を用いて下記を算出します。
①原価率算定
②期末商品帳簿売価価額に原価率を乗じて期末商品棚卸高算定
③棚卸減耗分に原価率を乗じて棚卸減耗費を算定
売価還元低価法
売価還元低価法とは
売価還元原価法から、分母の値下額と値下取消額を除外して原価率を計算し、期末商品の低価基準の評価額を求められます。
原価率= 当期繰越商品原価+当期受入原価総額
期首繰越商品小売価額+当期受入原価総額+原始値入額+値上額―値上取消額
売価還元低下法は評価損の算定に用います。
①売価還元低下法で原価率を算定
②売価還元原価法の原価率ー売価還元低下法の原価率
→評価損の評価損率
(期末商品棚卸ー棚卸減耗費)×評価損の評価損率
それでは、実際に事例で解説していきます。
前提条件
・期首商品売価:200
・当期受入原価総額:900
・原始値入額:1,000
・値上額:300
・値上取消額:(△)100
・値下額:(△)500
・値下取消額:200
・期末帳簿棚卸売価:400
期末商品棚卸高は売価還元原価法を用い、商品評価損の算定は、売価還元低価法を用いて算定。
原価率算定
・期首商品売価:200
・当期受入原価総額:900
・原始値入額:1,000
・値上額:300
・値上取消額:(△)100
・値下額:(△)500
・値下取消額:200
原価率= 当期繰越商品原価100+当期受入原価総額900
期首繰越商品小売価額200+当期受入原価総額900+原始値入額1,000+値上額300―値上取消額100―値下額500+値下取消額200
原価率=0.5
期末帳簿棚卸高算定
期末帳簿棚卸売価:400
期末棚卸時、売価の金額で行っています。
これを原価の金額にする必要があります。
400×0.5(原価率=200)
これで、期末帳簿棚卸高200となりました。
棚卸減耗費算定
期末帳簿棚卸売価:400
期末実地棚卸売価:300
期末帳簿棚卸売価400で期末実地棚卸売価300でした。
この差額は棚卸減耗費となるので差額に原価率をかけて棚卸減耗費をもとめます。
(期末帳簿棚卸売価400-期末実地棚卸売価300)×原価率0.5
=棚卸減耗費50
商品評価損算定
売価還元低価法を採用し、商品評価損を計上する方法をとります。
売価還元低価法での原価率算定時、値下額および値下取消額を考慮しません。
原価法と低価法の原価率を算定
原価法の原価率の算定はすでに算出した、0.5となります。
低価法は、
原価率= 当期繰越商品原価100+当期受入原価総額900
期首繰越商品小売価額200+当期受入原価総額900+原始値入額1,000+値上額300―値上取消額100
となり、ここでは、小数第3位を四捨五入し、0.44となりました。
商品評価損の算定
下記の算式に当てはめていきます。
商品評価損=(期末帳簿価額―棚卸減耗費)×(原価法原価率―低価法原価率)
(期末帳簿価額200―棚卸減耗費50)×(原価法原価率0.5―低価法原価率0.44)
=9
期末決算整理仕訳
期末商品棚卸高が算定できましたので、期末決算整理仕訳を行います。
期首商品棚卸高:100
期末商品棚卸高:200(上記で算定)
棚卸減耗費:50(上記で算定)
商品評価損:9(上記で算定)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 100 | 繰越商品 | 100 |
繰越商品 | 200 | 仕入 | 200 |
棚卸減耗費 | 50 | 繰越商品 | 50 |
商品評価損 | 9 | 繰越商品 | 9 |
それでは、次ページで②法人税法が規定する計算式を解説していきます。
法人税が規定する売価還元法
計算式
原価率=期首繰越商品原価+当期受入原価総額
売上高+期末繰越商品売価
となります。わかりやすく図にすると下記のようになります。
それでは、実際に事例をみていきます。
前提条件
・期首商品売価:200
・当期受入原価総額:900
・原始値入額:1,000
・値上額:300
・値上取消額:(△)100
・値下額:(△)500
・値下取消額:200
・期末帳簿棚卸売価:400
原価率算定
期末帳簿棚卸売価:400
上記から計算式に当てはめていきます。
原価率=100(期首繰越商品原価)+900(当期受入原価総額)
1,600(売上高)+400(期末繰越商品売価)
計算すると
原価率=0.5
となりました。
期末帳簿棚卸高算定
期末棚卸時売価の金額で行っています。
これを期末原価の金額にする必要があります。
期末帳簿棚卸売価:400
400×0.5(原価率=200)
これで、期末帳簿棚卸高200となりました。
期末決算整理仕訳
期末商品棚卸高が算定できましたので、期末決算整理仕訳を行います。
期首商品棚卸高:100
期末商品棚卸高:200(上記で算定)
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 100 | 繰越商品 | 100 |
繰越商品 | 200 | 仕入 | 200 |