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【会計基準】固定資産の減損に係る会計基準


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一 対象資産

 本基準は、固定資産を対象に適用する。ただし、他の基準に減損処理に関する定めがある資産、例えば、「金融商品に係る会計基準」における金融資産や「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産については、対象資産から除くこととする。(注1)(注12)

(注1)
本基準における用語の定義は、次のとおりである。
1.回収可能価額とは、資産または資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額をいう。
2.正味売却価額とは、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除して算定される金額をいう。
3.時価とは、公正な評価額をいう。通常、それは観察可能な市場価額をいい、市場価額が観察できない場合には合理的に算定された価額をいう。
4.使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値をいう。
5.共用資産とは、複数の資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの生成に寄与する資産をいい、のれんを除く。


(注12)
1.ファイナンス・リース取引について、借手側が賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っている場合、借手側が当該ファイナンス・リース取引により使用している資産(以下「リース資産」という。)又は当該リース資産を含む資産グループの減損処理を検討するに当たっては、当該リース資産の未経過リース料の現在価値を、当該リース資産の帳簿価額とみなして、本基準を適用する。ただし、リース資産の重要性が低い場合においては、未経過リース料の現在価値に代えて、割引前の未経過リース料を、リース資産の帳簿価額とみなすことができる。
2.賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っているファイナンス・リース取引に係るリース資産に本基準を適用した場合、リース資産に配分された減損損失は負債として計上し、リース契約の残存期間にわたり規則的に取崩す。取崩された金額は、各事業年度の支払リース料と相殺する。
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二 減損損失の認識と測定

1.減損の兆候

 資産又は資産グループ(6.(1)における最小の単位をいう。)に減損が生じている可能性を示す事象(以下「減損の兆候」という。)がある場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定を行う。減損損失の兆候としては、例えば、次の事象が考えられる。
 ① 資産又は資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること
 ② 資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、あるいは、生ずる見込みであること(注2)

(注2)
 資産又は資産グループが使用される範囲又は方法について生ずる当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化とは、資産又は資産グループが使用されている事業を廃止又は再編成すること、当初の予定よりも著しく早期に資産又は資産グループを処分すること、資産又は資産グループを当初の予定と異なる用途に転用すること、資産又は資産グループが遊休状態になったこと等をいう。

③ 資産又は資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したか、あるいは、悪化する見込みであること
④ 資産又は資産グループの市場価額が著しく下落したこと



2.減損損失の認識

 (1)減損の兆候がある資産又は資産グループについての減損損失を認識するかどうかの判定は、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識する。
 (2)減損損失を認識するかどうかを判定するために割引前将来キャッシュ・フローを見積もる期間は、資産の経済的残存使用年数又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数と20年のいずれか短い方とする。(注3)(注4)

(注3)
主要な資産とは、資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって最も重要な構成資産をいう。


(注4)
資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、20年経過時点の回収可能価額を算定し、20年目までの割引前将来キャッシュ・フローに加算する。




3.減損損失の測定

 減損損失を認識すべきであると判定された資産又は資産グループについては、帳簿価額を回収可能額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とする。



4.将来キャッシュ・フロー

(1)減損損失を認識するかどうかの判定に際して見積もられる将来キャッシュ・フロー及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積る。
(2)将来キャッシュ・フローの見積りに際しては、資産又は資産グループの現在の使用状況及び合理的な使用計画等を考慮する。(注5)

(注5)
計画されていない将来の設備の増強や事業の再編の結果として生ずる将来キャッシュ・フローは、見積りに含めない。また、将来の用途が定まっていない遊休資産については、現在の状況に基づき将来キャッシュ・フローを見積る。

(3)将来キャッシュ・フローの見積金額は、生起する可能性の最も高い単一の金額又は生起しうる複数の将来キャッシュ・フローをそれぞれの確率で加重平均した金額とする。(注6)

(注6)
将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクについては、将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させる。ただし、減損損失を認識するかどうかを判定する際に見積られる割引前将来キャッシュ・フローの算定においては、このリスクを反映させない。

(4)資産又は資産グループに関連して間接的に生ずる支出は、関連する資産又は資産グループに合理的な方法により配分し、当該資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りに際し控除する。
(5)将来キャッシュ・フローには、利息の支払額並びに法人税等の支払額及び還付額を含めない。



5.使用価値の算定に際して用いられる割引率

 使用価値の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値を反映した税引前の利率とする。
 資産又は資産グループに係る将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクが、将来キャッシュ・フローの見積りに反映されていない場合には、割引率に反映させる。(注6)

(注6)
将来キャッシュ・フローが見積値から乖離するリスクについては、将来キャッシュ・フローの見積りと割引率のいずれかに反映させる。ただし、減損損失を認識するかどうかを判定する際に見積られる割引前将来キャッシュ・フローの算定においては、このリスクを反映させない。




6.資産のグルーピング

(1)資産のグルーピングの方法
 減損損失を認識するかどうかの判定と減損損失の測定において行われる資産のグルーピングは、他の資産又は資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行う。
(2)資産グループについて認識された減損損失の配分
 資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、当該資産グループの各構成資産に配分する。



7.共用資産の取扱い

 共用資産に減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定は、共用資産が関連する複数の資産又は資産グループに共用資産を加えた、より大きな単位で行う。(注7)

(注7)
共用資産又はのれんに係る資産のグルーピングを、共用資産又はのれんが関連する複数の資産又は資産グループに共用資産又はのれんを加えた、より大きな単位で行う場合、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、先ず、資産又は資産グループごとに行い、その後、より大きな単位で行う。

 共用資産を含む、より大きな単位について減損損失を認識するかどうかを判定するに際しては、共用資産を含まない各資産又は資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較する。この場合に、共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、共用資産に配分する。(注8)

(注8)
共用資産に配分される減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過することが明らかな場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産又は資産グループに配分する。
 共用資産の帳簿価額を当該共用資産に関連する資産又は資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定することができる。この場合に、資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、共用資産の配分額を含む当該資産グループの各構成資産に配分する。




8.のれんの取扱い

 のれんを認識した取引において取得された事業の単位が複数である場合には、のれんの帳簿価額を合理的な基準に基づき分割する。(注9)(注10)

(注9)
のれんの帳簿価額を分割し帰属させる事業の単位は、取得対価が概ね独立して決定され、かつ、取得後も内部管理上独立した業績報告が行われる単位とする。


(注10)
のれんの帳簿価額の分割は、のれんが認識された取引において取得された事業の取得時における時価の比率に基づいて行う方法その他合理的な方法による。

 分割されたそれぞれののれんに減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定は、のれんが帰属する事業に関連する複数の資産グループにのれんを加えた、より大きな単位で行う。(注7)

(注7)
共用資産又はのれんに係る資産のグルーピングを、共用資産又はのれんが関連する複数の資産又は資産グループに共用資産又はのれんを加えた、より大きな単位で行う場合、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、先ず、資産又は資産グループごとに行い、その後、より大きな単位で行う。

 のれんを含む、より大きな単位について減損損失を認識するかどうかの判定するに際しては、のれんを含まない各資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額にのれんの帳簿価額を加えた金額と、割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較する。
この場合に、のれんを加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、のれんに配分する。(注11)

(注11)
のれんに配分された減損損失が、のれんの帳簿価額を超過する場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産グループに配分する。

 のれんの帳簿価額を当該のれんが帰属する事業に関連する資産グループに合理的な基準で配分することができる場合には、のれんの帳簿価額を各資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定することができる。この場合に、各資産グループについて認識された減損損失は、のれんに優先的に配分し、残額は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、当該資産グループの各構成資産に配分する。



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三 減損処理後の会計処理

1.減価償却

 減損処理を行った資産については、減損損失を控除した帳簿価額に基づき減価償却を行う。



2.減損損失の戻入れ

 減損損失の戻入れは、行わない。

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四 財務諸表における開示

1.貸借対照表における表示

 減損処理を行った資産の貸借対照表における表示は、原則として、減損処理前の取得原価から減損損失を直接控除し、控除後の金額をその後の取得原価とする形式で行う。ただし、当該資産に対する減損損失累計額を、取得原価から間接控除する形式で表示することもできる。この場合、減損損失累計額を減価償却累計額に合算して表示することができる。



2.損益計算書における表示

 減損損失は、原則として、特別損失とする。



3.注記事項

 重要な減損損失を認識した場合には、減損損失を認識した資産、減損損失の認識に至った経緯、減損損失の金額、資産のグルーピングの方法、回収可能価額の算定方法等の事項について注記する。