一 外貨建取引
1.取引発生時の処理
外貨建取引は、原則として、当該取引発生時の為替相場による円換算額をもって記録する。ただし、外貨建取引に係る外貨建金銭債権債務と為替予約との関係が「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品に係る会計基準」という。)における「ヘッジ会計の要件」を充たしている場合には、当該外貨建取引についてヘッジ会計を適用することができる。(注1)(注2)(注3)(注4)(注5)(注6)(注7)
外貨建取引とは、売買価額その他取引価額が外国通貨で表示されている取引をいう。
外貨建取引には、
(イ)取引価額が外国通貨で表示されている物品の売買又は役務の授受
(ロ)決済金額が外国通貨で表示されている資金の借入又は貸付
(ハ)券面額が外国通貨で表示されている社債の発行
(二)外国通貨による前渡金、仮払金の支払又は前受金、仮受金の受入
(ホ)決済金額が外国通貨で表示されているデリバティブ取引
等が含まれる。
なお、国内の製造業者等が商社等を通じて輸出入取引を行う場合であっても、当該輸出入取引によって商社等に生ずる為替差損益を製造業者等が負担する等のため実質的に取引価額が外国通貨で表示されている取引と同等とみなされるものは、外貨建取引に該当する。
注2 取引発生時の為替相場について
取引発生時の為替相場としては、取引が発生した日における直物為替相場又は合理的な基礎に基づいて算定された平均相場、例えば取引の行われた月又は週の前日又は先週の直物為替相場を平均したもの等、直近の一定期間の直物為替相場に基づいて算出されたものによる。
ただし、取引が発生した日の直近の一定の日における直物為替相場、例えば取引の行われた月若しくは週の前月若しくは前週の末日又は当月若しくは当週の初日の直物為替相場によることも妨げない。
注3 外国通貨による記録について
外貨建債権債務及び外国通貨の保有状況並びに決済方法等から、外貨建取引について当該取引発生時の外国通貨により記録することが合理的であると認められる場合には、取引発生時の外国通貨の額をもって記録する方法を採用することができる。
この場合には、外国通貨の額をもって記録された外貨建取引は、各月末等一定の時点において、当該時点の直物為替相場又は合理的な基礎に基づいて算定された一定期間の平均相場による円換算額を付するものとする。
注4 外貨建金銭債権債務について
外貨建金銭債権債務とは、契約上の債権額又は債権額が外国通貨で表示されている金銭債権債務をいう。
注5 為替予約等について
為替予約等には、通貨先物、通貨スワップ及び通貨オプションが含まれる。
注6 ヘッジ会計の方法について
ヘッジ会計を適用する場合には、金融商品に係る会計基準における「ヘッジ会計の方法」によるほか、当分の間、為替予約等により確定する決算時における円貨額により外貨建取引及び金銭債権債務等を換算し直物為替相場との差額を期間配分する方法(以下「振当処理」という。)
によることができる。
注7 為替予約等の振当処理について
外貨建金銭債権債務等に係る為替予約等の振当処理(当該為替予約等が物品の売買又は役務の授受に係る外貨建金銭債権債務に対して、取引発生時以前に締結されたものである場合を除く。)においては、当該金銭債権債務等の取得時又は発生時の為替相場(決算時の為替相場を付した場合には当該決算時による為替相場)による円換算額と為替予約等による円貨額との差額のうち、予約等の締結時までに生じている為替相場の変動による額は予約日の属する期の損益として処理し、残額は予約日の属する期から決済日の属する期までの期間にわたって合理的な方法により配分し、各期の損益として処理する。
ただし、当該残額について重要性が乏しい場合には、当該残額を予約日の属する期の損益として処理することができる。
取得時又は発生時の為替相場による円換算額と為替予約等による円貨額との差額のうち次期以降に配分される額は、貸借対照表上、資産の部又は負債の部に記載する。
2.決算時の処理
(1)換算方法
外国通貨、外貨建金銭債権債務、外貨建有価証券及び外貨建デリバティブ取引等の金融商品については、決算時において、原則として、次の処理を行う。ただし、外貨建金銭債権債務と為替予約との関係が金融商品に係る会計基準における「ヘッジ会計の要件」を充たしている場合には、当該外貨建金銭債権債務等についてヘッジ会計を適用することができる。(注4)(注5)(注6)(注7)(注8)
外貨建金銭債権債務とは、契約上の債権額又は債権額が外国通貨で表示されている金銭債権債務をいう。
注5 為替予約等について
為替予約等には、通貨先物、通貨スワップ及び通貨オプションが含まれる。
注6 ヘッジ会計の方法について
ヘッジ会計を適用する場合には、金融商品に係る会計基準における「ヘッジ会計の方法」によるほか、当分の間、為替予約等により確定する決算時における円貨額により外貨建取引及び金銭債権債務等を換算し直物為替相場との差額を期間配分する方法(以下「振当処理」という。)
によることができる。
注7 為替予約等の振当処理について
外貨建金銭債権債務等に係る為替予約等の振当処理(当該為替予約等が物品の売買又は役務の授受に係る外貨建金銭債権債務に対して、取引発生時以前に締結されたものである場合を除く。)においては、当該金銭債権債務等の取得時又は発生時の為替相場(決算時の為替相場を付した場合には当該決算時による為替相場)による円換算額と為替予約等による円貨額との差額のうち、予約等の締結時までに生じている為替相場の変動による額は予約日の属する期の損益として処理し、残額は予約日の属する期から決済日の属する期までの期間にわたって合理的な方法により配分し、各期の損益として処理する。
ただし、当該残額について重要性が乏しい場合には、当該残額を予約日の属する期の損益として処理することができる。
取得時又は発生時の為替相場による円換算額と為替予約等による円貨額との差額のうち次期以降に配分される額は、貸借対照表上、資産の部又は負債の部に記載する。
注8 決算時の直物為替相場について
決算時の直物為替相場としては、決算日の直物為替相場のほか、決算日の前後一定期間の直物為替相場に基づいて算出された平均相場を用いることができる。
①外国通貨
外国通貨については、決算時の為替相場による円換算額を付する。
②外貨建金銭債権債務(外貨預金を含む。以下同じ)
外貨建金銭債権債務については、決算時の為替相場による円換算額を付する。ただし、外貨建自社発行社債のうち転換請求期間満了前の転換社債(転換請求の可能性がないと認められるものを除く。)については、発行時の為替相場による円換算額を付する。(注9)
外貨建金銭債権債務及び外貨建債券について償却原価法を適用する場合における償却額は、外国通貨による償却額を期中平均相場により円換算した額による。
③外貨建有価証券
イ 満期保有目的の外貨建債券については、決算時の為替相場による円換算額を付する。(注9)
外貨建金銭債権債務及び外貨建債券について償却原価法を適用する場合における償却額は、外国通貨による償却額を期中平均相場により円換算した額による。
ロ 売買目的有価証券及びその他有価証券については、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付する。
ハ 子会社株式及び関連会社株式については、取得時の為替相場による円換算額を付する。
二 外貨建有価証券について時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により評価額の引下げが求められる場合には、当該外貨建有価証券の時価又は実質価額は、外国通貨による時価又は実質価額を決算時の為替相場により円換算した額による。
④デリバティブ取引等
デリバティブ取引等①から③に掲げるもの以外の外貨建の金融商品の時価評価においては、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算するものとする。
(2)換算差額の処理
決算時における換算によって生じた換算差額は、原則として、当期の為替差損益として処理する。ただし、有価証券の時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により、決算時の為替相場による換算をおこなったことによって生じた換算差額は、当期の有価証券の評価損として処理する。また、金融商品に係る会計基準による時価評価に係る評価差額に含まれる換算差額については、原則として、当該評価差額に関する処理方法に従うものとする。(注10)
その他有価証券に属する債券については、外国通貨による時価を決算時の為替相場で換算した金額のうち、外国通貨による時価の変動に係る換算差額を評価差額とし、それ以外の換算差額については為替差損益として処理することができる。
3.決済に伴う損益の処理
外貨建金銭債権の決済(外国通貨の円転換を含む。)に伴って生じた損益は、原則として、当期の為替差損益として処理する。
二 在外支店の財務諸表項目の換算
在外支店における外貨建取引については、原則として、本店と同様に処理する。ただし、外国通貨で表示されている在外支店の財務諸表に基づき本支店合併財務諸表を作成する場合には、在外支店の財務諸表について次の方法によることができる。(注11)
在外支店において外国通貨で表示されているたな卸資産について低価基準を適用する場合又は時価の著しい下落により評価額の引下げが求められる場合には、外国通貨による時価又は実質価額を決算時の為替相場により円換算した額による。
1.収益及び費用の換算の特例
収益及び費用(収益性負債の収益化額及び費用性資産の費用価額を除く。)の換算については、期中平均相場によることができる。(注12)
収益及び費用の換算に用いる期中平均相場には、当該収益及び費用が帰属する月又は半期等を算定期間とする平均相場を用いることができる。
2.外貨表示財務諸表項目の換算の特例
在外支店の外国通貨で表示された財務諸表項目の換算にあたり、非貨幣性項目の額に重要性がない場合には、すべての貸借対照表項目(支店における本店勘定等を除く。)について決算時の為替相場による円換算額を付する方法を適用することができる。この場合において、損益項目についても決算時の為替相場によることを妨げない。
3.換算差額の処理
本店と異なる方法により換算することによって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する。
三 在外子会社等の財務諸表項目の換算
連結財務諸表の作成又は持分法の適用にあたり、外国にある子会社又は関連会社の外国通貨で表示されている財務諸表項目の換算は、次の方法による。
1.資産及び負債
資産及び負債については、決算時の為替相場による円換算額を付する。
2.資本
親会社による株式の取得時における資本に属する項目については、株式取得時の為替相場による円換算額を付する。
親会社による株式の取得後に生じた資本に属する項目については、当該項目の発生時の為替相場による円換算額を付する。
3.収益及び費用
収益及び費用については、原則として期中平均相場による円換算額を付する。ただし、決算時の為替相場による円換算額を付することを妨げない。
なお、親会社との取引による収益及び費用の換算については、親会社が換算に用いる為替相場による。この場合に生じる差額は、当期の為替差損益として処理する。(注12)
収益及び費用の換算に用いる期中平均相場には、当該収益及び費用が帰属する月又は半期等を算定期間とする平均相場を用いることができる。
4.換算差額の処理
換算によって生じた換算差額については、為替換算調整勘定として貸借対照表の資本の部に記載する。(注13)
子会社に対する持分への投資をヘッジ対象としたヘッジ手段から生じた為替換算差額については、為替換算調整勘定を含めて処理する方法を採用することができる。